気持ちとは裏腹に、 言葉に吐き出してしまうものだ。
本当は、彼女の、その白くて細い腕だったり、小さい背だったり、
ふわっとした長い髪の毛を、とても愛しく、とても綺麗だと思うのだけど、
それを素直に、 言えないのである。

彼女は、決して自分の彼女ではなく、
表面上の言葉にしてしまえば、ただの友達というやつで、
いつも、なんだかんだ言い合いをしている仲で、
今日もその、なんだかんだの言い合いで、また思ってもいないことを、
口走ってしまったわけで、 ちょっと膨れた顔を見るのが、
実は、 ちょっぴり すきだったりする。
だから、 気持ちとは裏腹なことを 言ってしまうのだろうか。

「ちょっと、」
そんなことを考えている中、 彼女が口を開いた。

「…なに。」

「黙って何考えてるの。いうことないの?」
それはそれは、言いたいことは、 本当はあるけど、
そんなことは、口が裂けても言えない。
どうして、人は 本当に伝えたいことにとても時間をかけてしまうのだろうか。
まるで、明日が来ることが 当たり前のように思っているからだろうか。
こんな平凡な毎日が、のらりくらりとやってきて、
また、なんだかんだ言い合いをする と 心の中で常に確信しているのだろうか。

「いや、 ちょっと、 言い過ぎた と 思う。すまん。」

「…わかってるなら、いいんですけど、ね!」

「おお、 うん。」
確かに、生まれて17年間一度も朝が来なかったことはないけど、
どんなに明日が来てほしくなくても、どんなに嫌なことが待ち構えていても、
夜寝ても寝なくても、朝が来なかったことはないけど、
いや、だからこそ、きっと 明日が来ることが当たり前に思えるんだ。
だけど、 本当に明日が来ることが保障できるかって聞かれたら、
答えはノーだ。

明日が来ることなんて、 本当は誰にだってわからない。


「けど、    」

「えっ…?」

その瞬間、彼女の手を掴んだ。

「明日もきっと、 怒らせるよ?いや、これからも ずっと かな。」

「?? なにそれ!わたし毎日怒らなきゃなのー!」

誰にだって、 わからないから 、
やっぱり毎日、膨れた顔を見たいと思ってしまう。
そんなことを思っているから、 伝えたいことを伝えられないのか。
けど、何でもないこんな毎日の一瞬でも、大切にできたらいいなと思う。

「ははっ、 明日もその膨れ顔見せろよ。 約束な。」